多自然型工法により河川改修工事が行われている岩手県内の雪谷川と宮守川を対象にして調査を行った。調査は、雪谷川では流下方向に11箇所、宮守川では5箇所調査地点を選定し、年4回(春、夏、秋、冬)に渡って、各地点で水質、流量、底生動物、河床の粒度等を測定した。なお、底生動物は25cm四方のコードラート付きのサーバーネットで採取し、出来るだけ種まで同定した。得られた結果をまとめると以下のようになる。 雪谷川では全面的な改修工事が行われており、局所的に浮遊物質濃度が非常に高い場合があったが、短期間高濃度の浮遊物質が存在していても底生動物相は余り影響されないことが分かった。河床が完全に掘削され、掘削した岩を再度河床に置いた地点では、当然ながら工事終了直後はコカゲロウ属とユスリカ科が僅かに数十個体存在するのみでほとんど底生動物は認められず、Shannonの多様性指数も0.98と低いが、3ヶ月あるいは6ヶ月後の調査によると多様性指数も各々2.40、2.71になり、半年後には個体数、種数もかなり回復が認められ、工事前の同時期とほぼ同じ値になった。また、群集類似度も工事前の同時期と比較すると6ヶ月後には0.80となった。従って、河床の状況を整えれば底生動物相の回復が速やかに行われることが分かった。また、河床を掘削しても河床に棲み場としての良好な環境を残し、その上流部が攪乱されていないならば底生動物の種数及び個体数にはさほど影響がないことが分かった。 宮守川では多自然型工法による改修工事がほぼ終了していた。河畔林が存在することにより、底生動物の多様性が回復することが定量的に示された。また、多段式落差工と通常の落差工直下の比較では、河畔林よりも河床の状況が底生動物相により大きく影響することが分かった。
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