多自然型工法によって河川改修工事終了している岩手県南部の宮守川と工事が行われている岩手県北部を流下する雪谷川で調査を行った。宮守川は最上流部と中流部に河畔林を有しており、河畔林が水生昆虫の多様性に及ぼす影響を主に検討した。流下有機物量は上流部では粒径6.7mm以上のものが多く、流下に従って低下するが、中流部の河畔林を有する地点で若干増加した。また、中流部の河畔林を有する地点及びその下流1kmの地点では水生昆虫の個体数及び種数が増加し、多様性指数も大きくなった。shredderの個体数は粒径3.35mm以上の流下有機物量と高い相関を示し、下流部における河畔林の存在が落葉を餌とするshredder等の生息を助長し、水生昆虫相の多様性の回復に貢献していることが分かった。雪谷川では3年間に渡り年4回(春、夏、秋、冬)、流下方向に11地点において、水質、流量、底生動物を測定した。河川改修工事により、水生昆虫の個体数は一時的に激減し、工事期間や工事期間が短い護岸工事のみの地点では、終了後3ヶ月経過した時点で工事前の同じ季節の状態に回復したが、工事終了後も直上流や直下流で工事が行われている地点や工事期間が半年以上と長い地点等では工事終了後8ヶ月経過しても工事前の状態には回復しなかった。また、工事前の優占種(シマトビゲラ属)の回復は早く、非優占種のせき翅目やエルモンヒラタカゲロウ、ヘビトンボ、アミカ科等は工事終了後8ヶ月経過しても回復しなかった。工事終了後の水生昆虫の遷移を生活型に見ると、一般に言われている掘潜型→匍匐型→造網型と遷移した地点と、匍匐型が少ない地点に分けられた。これは上流部の工事地点からの細粒土砂の供給により石レキ面に捕まって移動する昆虫の生息を妨げるためと考えられた。
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