水処理技術の分野は非常に長い歴史を持つ技術の分野である。経験的には時代の要求する水処理のレベルを確実に実現することで、人々の健康の保持、新技術の開発、さらには環境保全の目的を達成してきている。しかし、これらの、技術の発展の過程は、経験的な要素が大きく、その発展は積み重ねの少ないものとなってきた。経験的な要素が大きくなる理由は、対象となる水が極めて多様であり、地域の特性に依存するところが大きく、普遍的な原理が適用しにくいというところにあった。 しかし、一方で幾つもの経験の中に共通する原則的な関係があることも理解されてきたところであり、このような原則的な関係を整理して、体系化していくことは、水処理にかかわる技術の発展にとってきわめて重要な要素を提供するものとなる。本研究においては、水処理にかかわる、流体運動特に乱流の特性の理解、生物処理の基本となる生物反応の基本的理解、を中心として、水処理技術にかかわる理論形成の可能性を論じるとともに、理論水処理学の試論を展開するものである。 本研究は、このような試論の提示がどの程度可能かをサーベイすることをもう一つの目的と結論としては、水処理の水理学的基礎を流体力学の基礎から説き起こすことの可能性を示し、特に水処理におけるフロックの強度を具体的に推定する方法とその絶対値を求めることに成功した。また、生物処理にあっては、酸化還元の原理から生物反応に必要なエネルギーの関係を明らかにすること、生物の特性を遺伝子レベルで確認することの有効性等について、その理論構築の可能性を示すことができた。 このように、水処理過程を理論的に説明するモデルの提示は可能であり、多くの関心のある研究者の協力を得て、第2期の研究計画を立てることは非常に有効であることが明らかになった。
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