研究概要 |
実下水を原水として標準活性汚泥法と膜分離活性汚泥法における大腸菌ファージ及び糞便性大腸菌群の除去性能を調査した。さらに,膜を人為的に破断した場合の大腸菌ファージQβ及びEcoli K12の除去性能を小型膜モジュールを用いて調査した。使用膜は浸漬型中空糸MF膜(ポリエチレン製)で公称孔径は0.4μmである。 膜分離活性汚泥法における初沈流入水に対する平均対数除去率は,総大腸菌ファージで5.71log, RNAファージで5.16log, DNAファージで5.40logであった。また,標準活性汚泥法ではそれぞれ,2.32log,2.63log,2.24logであり,膜分離活性汚泥法の方が2.5〜3.4log大きかった。一方,糞便性大腸菌群は膜分離活性汚泥法で5.74log,標準活性汚泥法で2.47logであり,膜分離活性汚泥法の方が3.3log大きかった。 小型膜モジュール(新膜)の大腸菌ファージQβの対数除去率は2〜3logであり、公称孔径の約1/17のウイルス粒子であっても99〜99.9%の除去率が得られた。膜の人為的破断による除去率の変化は、大腸菌ファージQβでは観察されなかったが、Ecoli K12では除去率の低下が観察された。このことは、実際の膜分離活性汚泥法においても膜破断時に、大腸菌の流出が生じることを示唆している。実下水を用いた膜分離活性汚泥プラントで人為的に1%の中空糸膜を破断した場合の膜ろ過水濃度は、RNAファージでは破断後30分で1.3PFU/mL、2時間で0.02PFU/mLであった。また、糞便性大腸菌群では破断後5分で120.5CFU/mL、6.5時間で3.82CFU/mLであり、破断による微生物の流出が確認された。 膜分離活性汚泥法は標準活性汚泥法よりも微生物学的安全性が高いが、膜破断が生じた場合には,一時的に膜ろ過水中の微生物濃度が高くなる。膜破断の有無は、膜ろ過水の濁度や大腸菌群数の常時監視により可能であることが示唆された。
|