研究概要 |
兵庫県南部地震で実際に被災した建物について調査したところ、日本建築学会RC規準式では安全評価されるにも関わらず、実際には接合部破壊した建物が少なくないことが報告されている。この傾向は梁が柱に偏心して取り付く接合部に多く、偏心により接合部耐力が低下しているものと考えられるが、これまで偏心接合部に関する研究は無偏心接合部に対し極端に少なく、その性状については不明な点が多い。本研究は、偏心接合部における接合部せん断入力量が破壊形式に与える影響を明らかにすることを目的とする。 試験体は中層建物の中間階内柱を想定した実寸の約1/2縮小模型とし、両側の梁心が柱心に対して同量に偏心して取り付いた偏心接合部を対象とした。実験変数は(1)偏心距離(60mm、125mm),(2)接合部せん断入力量,(3)接合部補強筋量とその配筋方法の3つである。何れも梁曲げ降伏先行後の接合部せん断破壊(B・J型)となるように接合部せん断入力量を梁の曲げ耐力によって調整し、接合部せん断破壊が梁降伏直後に生じる高入力と梁降伏後の大変形時に生じる低入力を想定した。 以上の組み合わせで6体の試験体を用いて水平加力実験を行い、以下の知見を得た。 1)偏心接合部では、梁降伏時の接合部せん断入力が大きいと偏心側で接合部せん断破壊が、反対側で梁曲げ破壊が進行した。 2)偏心による接合部の捩れ変形のために梁付根断面の応力に偏在が生じ、引張応力・圧縮応力ともに偏心側で小さく、その反対側で大きくなる。このため偏心が大きいほど反対側断面のコンクリート圧縮域が局部的に圧縮限界に達するので、梁降伏耐力および梁曲げ終局耐力は計算値を下回った。 3)接合部の偏心側に補強筋を多く配筋すると、わずかに接合部の捩れ変形が小さくなったが、耐力等への効果は少なかった。 4)偏心接合部の場合には梁曲げ破壊を計画する際に、柱梁接合部耐力に大きな余裕度が必要である。
|