研究概要 |
昨年度の実験では、柱梁接合部のせん断破壊耐力を確認することを意図した試験体が、偏心の影響による梁曲げ耐力の低下によってせん断破壊しなかったため、今年度は柱梁接合部のせん断耐力の確認を主目的として実験計画を行った。 試験体は中層建物の中間階内柱を想定した実寸の約1/2縮小模型とし、両側の梁心が柱心に対して同量に偏心して取り付いた偏心接合部を対象とした。実験変数は(1)偏心距離(0mm、60mm、125mm),(2)接合部せん断入力量,(3)接合部補強筋量とその配筋方法の3つである。4体の試験体は柱梁接合部のせん断耐力を確認することを目的として、せん断破壊が先行するように梁曲げ耐力を十分に大きくした。偏心量を0,60,120mm各1体および125mm偏心を有し接合部補強筋量の多い試験体1体とした。残り1体は梁曲げ降伏先行後の接合部せん断破壊(B・J型)となるように接合部せん断入力量を梁の曲げ耐力を調整し、接合部補強筋が接合部破壊の制限に機能することを検討するために製作した。 以上の組み合わせで5体の試験体を用いて水平加力実験を行い、以下の知見を得た。 1)柱梁接合部のせん断破壊先行に設計した試験体は全て梁が曲げ降伏する前に接合部のせん断破壊により体力低下を示した。 2)柱梁接合部がせん断破壊を生じた後も骨組の耐力が急激に低下することなく、靭性を有する挙動を示した。これは本実験で用いた試験体に適度の接合部補強筋が配されていたことに起因すると考えられる。 3)柱梁接合部のせん断耐力は既往の提案式で求めることができるが、偏心の影響を有効幅で評価する場合には偏心量が大きくなるにつれて危険側の評価となる傾向が示された。 4)偏心を有する柱梁接合部の有効幅の算定の際に、接合部の被りコンクリート部分を除いた幅を真の有効幅として既往の耐力評価式を適用したところ、制度良く評価できることを明らかにした。
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