本研究は、鋼管あるいは溶融亜鉛めっき鋼管内部の腐食劣化状況について、より高い分解能を持つ高周波超音波の垂直パルス入力に対するエコー波を分析することにより、非破壊検査が可能であることを明らかにするために行われている基礎研究である。今年度は最終年度であるが、2年間の研究を通じて以下の成果が得られた。 1.超音波試験による鋼材裏面の粗度評価 粗度は、ワイヤー放電加工による線状に分布する溝群にモデル化された。溝群のパラメータは、溝深さ0.05〜0.15mm、溝幅0.3〜1.0mmの組合せであり、超音波試験により溝深さと溝幅を推定した。本実験より、以下の知見を得た。 (1)溝深さは、μmRzのような統計的粗さ単位と対応する。 (2)溝幅は、エコー波のFFT解析から得られるピーク周期と対応する。 (3)エコー波のピーク周期に対する感度あるいはその減衰性は、超音波発振子の発振周波数によって変化する。 2.超音波試験による溶融亜鉛めっき鋼材の厚さ測定法の検討 溶融亜鉛めっき鋼材の厚さを超音波試験により計測する方法は、確立されていないことから、基礎的な実験を行った。試験体は、板厚3.2〜22mm、めっき槽浸漬時間90〜300secを組合せた、前処理のみの非めっき部分を持つものである。計測は、超音波試験器のほか、マイクロメータ、電磁膜厚計を併用して行った。本実験より、以下の知見を得た。 (1)JIS1級亜鉛地金から求めた亜鉛の縦波音速は、結晶構造の影響により強い音響異方性を示し、稠密六方格子中心軸方向に4620m/sec、その直角方向に4320m/secであり、理科年表に記されている数値より大きい。 (2)板厚評価について、超音波試験の結果は、全層に鋼材の縦波音速を適用して求めた場合、電磁膜厚計によるめっき厚から求めた板厚と対応するが、めっき面に凹凸がある場合には、その影響を受ける。
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