トラス梁の地震時の崩壊挙動を正確にシミュレートするためには、繰り返し軸力載荷を受ける個材の力学的特性が極めて重要である。このために、平成13年度は、これまでに当研究室にて作成された個材の弾塑性座屈挙動に関する定式化を再考するとともに、これに関する予備実験を行った。これにより、繰り返し軸力を受ける個材の挙動をシミュレートするためには、バウシンガー効果およびひずみ硬化等により発生する個材内部の塑性域の広がりを適切に評価しなければならないことの問題点を確認した。このことを踏まえ、 まず、バウシンガー効果を表現するために、従来、1軸応力状態(純引張・純圧縮繰り返し載荷)でのバウシンガー効果を表現するために多用されているモデルであるBounding surfaceモデルを、軸カー曲げモーメント空間に拡張展開するとともに、その妥当性および有効性を示した。 また、従来の塑性ヒンジ法などの方法は、完全弾塑性体の場合には有効であるものの、個材内部の塑性域の広がりを考慮することは不可能であり、従来の概念にはない新たな評価手法が必要であることを確認した。しかしながら、その他の厳密な弾塑性評価法は実現象を正確にシミュレートできる反面、計算時間の増大など実用上の困難さを有している。そこで、ここで提示した塑性モデルでは、材端力に関する制約条件である降伏関数の形態を塑性域の広がりとともに変化させる新たな手法を提案している。これにより、塑性ヒンジ法と同等の計算時間で非常に精度の高い解が得られるようになった。
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