トラス梁の地震時の挙動を効率よくシミュレートするためには、個材の挙動を正確かつ簡便に評価する必要があり、そのような観点から行った昨年度までの研究成果として、個材内部の塑性領域の広がりを評価しうる簡易手法についての意義、ならびに、2フランジ断面に限定した上で理論的に基礎式の誘導を試み、個材の弾塑性座屈問題に対する本手法の有効性について提示した。 ただし、実際の個材は2フランジ断面ではなく、中実断面を有するものであり、このことを踏まえ、今年度は、これを長方形断面に拡張することを目的として、断面内での塑性化の進展を考えた場合の断面力(軸力・曲げモーメント)および軸ひずみ・曲げひずみ間における解法の提案を行った。 具体的には、長方形断面における断面力に対する制約条件式となる降伏条件式、塑性流れ則、および、硬化則の本来あるべき表現について提示している。当然ながら、これらは従来終局耐力を降伏関数とする一般化塑性ヒンジモデルとは全く異なるものであり、このような厳密な式を提示した研究はほかに見られない。 この研究での工学上の特筆すべき点は、断面内が完全に塑性化するまでの挙動は、残留する弾性部分の影響により生じる見かけ上のひずみ硬化を有する弾塑性体として取り扱うことが可能であることである。 なお、ここでは長方形断面に限定して基礎式の誘導を行ったが、他の断面形状にも容易に適用することができるものであることは式展開からも明らかである。残念ながら、本手法を用いた中実断面を有する個材の座屈問題に対する解法の確立までは達しなかったが、これについては今後の謀題とする。
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