著者らの一連の研究により、個材の降伏や座屈を含むトラス梁の挙動を単一要素にて解析するために必要な基本プラットフォームはほぼ完成されていると考えられる。しかしながら、個材座屈の影響を考慮したトラス梁要素では、個材の材料特性として完全弾塑性を採用しており、硬化特性あるいはバウシンガー効果を有する実挙動と比べると結果に大きな隔たりがある。そこで、本研究では、個材の硬化特性あるいはバウシンガー効果を合理的に考慮するための「個材に対する梁要素モデル」を提案している。具体的には、ここで提案する梁要素モデルは、従来の一般化塑性ヒンジモデルと同等の簡便さを残しつつ、一般化塑性ヒンジモデルでは考慮されない、塑性化領域長の影響、ならびに、硬化則およびバウシンガー効果の影響をも合理的に考慮しうるものである。本論文で得られた結論を列挙する。 1.力学的に明快なトラス梁を対象として、局所のひずみ硬化の現象による塑性領域長の変化が材端力に及ぼす影響について数値解析を通して検証するとともに、塑性化領域の広がりを考慮する上での基本的な考え方を明らかにした。 2.個材を2フランジ断面を有する梁として表現し、ひずみ硬化および塑性化領域の広がりを考慮する力学モデルを構築した。局所的な硬化は混合硬化を考慮したバイリニアモデルに限定して定式化をおこない、提案モデルと有限要素法による精解とを比較することにより妥当性の検証を示した。 3.2で構築した力学モデルに、バウシンガー効果の影響を付加させ、塑性化によるエネルギー散逸を正当に評価する力学モデルへと拡張・展開した。さらに、提案モデルと有限要素法による精解とを比較することにより妥当性の示した。
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