低引張強度のコンクリートを高靭性化して、袖壁・垂れ壁・腰壁などに使用し、柱自体が弾性状態にある時に、ひび割れを早期に発生させてエネルギーを吸収させ、制震効果を得るようなシステムの開発を目的としている。 本年度は、超軽量コンクリートに関する経験と既往のデータを用いて、骨材、混和材、繊維の種類と混入量を決定するための試験調合を行った。産業廃棄物の有効利用も考慮に入れて、廃ガラス骨材を使用し、コンクリート解体微粉抹も混和材として用いた。水セメント比60%程度、混入ビニロン繊維1.7%程度で引張靭性が大きい調合も得られたが、既往の理論的研究も参考にして、必要な引張靭性を得られる調合方法を一般化することが今後の主な課題である。また、このアプローチは高強度コンクリートの脆性的な破壊形態を改善するのにも有効であると考えられる。 中子筋を用いて十分にせん断補強した高強度コンクリート柱を設計し、低引張強度高靭性コンクリートの袖壁を取り付けた試験体を製作し、意図する復元力特性が得られるかを見極めるためのパイロット実験を計画した。ひび割れを分散させることが課題であり、高靭性コンクリートのマルチプルクラックを期待することのほかに、格子状に加工した繊維を使用することも一つの方法であることがわかり、次年度も継続して実験を計画することとした。
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