研究概要 |
地震による水平力に対して梁の降伏で崩壊機構に至るラーメン骨組を終局強度設計するとき,梁端接合部を破壊させないために,接合部に付与すべき耐力要求値を得るために,梁の変形角に応じて決まる最大応力の定量的情報を,実大鋼梁の地震時挙動を再現する動的載荷実験から得た.平成13年度は中低層建物の実大で標準的な長さに相当する材長4mのH形鋼,平成14年度は特に要求変形が大きくなる材長2.5mの短梁に相当するH形鋼,を対象とした.梁が負担しうる最大の応力を得る目的のため,座屈や早期破断,接合部局所変形などの応力低下を招く要因を排除し,動的載荷として歪速度効果による応力上昇を考慮した.梁の耐力には鋼材の材料特性が大きく影響するが,特に塑性繰返し履歴の影響が大きいと予想されるので,地震時挙動のランダム性を考えて,繰返し載荷履歴は振幅の大きさと繰返し数の組合せを変えたパターンの異なる4種類を用いた. 本実験から得られた載荷履歴の影響に関する知見は次の3点に要約される.1)梁の耐力は同じ振幅による繰返し数が3回までは耐力が上昇し,2)3回までの繰返しに伴う耐力上昇度は直前の振幅に依存し,3)3回以降の繰返しで耐力は一定値に収束しその大きさは振幅によって決まる. また本実験から得た耐力を既往の柱梁接合部の実験と比較して,想定通りに梁が負担する最大の応力を定量的に得られていることを確認した.また,この実験から得た知見に基づいて,与えられた要求変形に対して梁端接合部に付与すべき保有耐力の決定方法を提案した.鋼構造の耐震設計の高度化のために,性能志向型設計において梁の塑性変形の大きさに応じた接合部係数を設定しようとするとき,その値を決定するのに利用できる,有益な定量的資料を本実験から得ることができた.
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