研究概要 |
本研究は石炭灰を活用したコンクリートという新材料を建築構造物の耐震部材に適用しようとするもので,このような環境保全に寄与する石炭灰利用コンクリートの早期実現のためには,多くのデータの蓄積が必要となる。耐震部材はその性能によっては地震時において人命に関わるものであり,実大試験体による性能確認が不可欠である。そこで,建築構造物の耐震性能を支配する柱について,実大の鉄筋コンクリート造試験体を作製し耐震実験を実施した。試験体は断面80cm角,高さ2.4mの同一形状の鉄筋コンクリート柱3体で,石炭灰混入方法,コンクリート強度,帯筋の配筋手法および導入する軸力を変数としている。いずれも中低層建物の最下層柱を想定しており,現行の設計法に基づき曲げ降伏先行型破壊形となるよう設計した。試験体の作製を施工試験と位置づけ,実際の建物建設工事に準じてコンクリート打設作業を行った。その結果,石炭灰を活用した場合もフレッシュコンクリートの流動性や充填性について普通コンクリートと遜色のないことを確認し,従来の工法によって施工可能であることを検証した。耐震実験では,一定軸力を導入の後に破壊に至るまで水平力の漸増繰り返し載荷を行い,弾性時の軸圧縮特性と弾塑性域にわたる水平抵抗性能を検討した。その結果,石炭灰を活用した実大鉄筋コンクリート柱の弾性時圧縮特性は普通コンクリートのための既往の評価式が適用できること,水平最大耐力は既往の算定式により評価できること,荷重変位関係において充分な変形能力とエネルギー吸収能力を持ち普通コンクリートによる場合と同等の水平抵抗性能を有することを明らかにした。以上の結果から,建築構造物における石炭灰活用の有効性を検証した。
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