研究概要 |
芯鉄骨を鉄筋コンクリート(以下RC)断面の中心に挿入した芯鉄骨合成断面の柱材の弾塑性挙動について調べている.芯鉄骨には,部材のせん断破壊の防止と軸力抵抗要素としての有効性を期待している.本年度はこの芯鉄骨合成柱とRC梁で構成された混合構造骨組の耐震性能について載荷実験を行うことにより調べた.試験体は建築構造骨組の一部をモデル化した,柱と梁からなる十字形架構とト字形架構であり,地震荷重に対応する荷重を載荷する実験を行った.試験体数は5体である.一般にRC梁には主筋が密に配筋されているため,芯鉄骨を柱梁接合部内に貫通させることは困難であることを考慮し,本年度は柱の内法高さ区間のみに芯鉄骨を挿入させた場合の挙動について調べた.ただし,芯鉄骨の材端での補強は行っていない.実験変数は柱の構造種別(芯鉄骨合成柱と鉄筋コンクリート柱の2種類)と軸力比(断面の圧縮耐力に対する作用軸力の比で0.3および0.4の2種類)である.さらに実験変数に崩壊型を選び,4っの試験体(十字形架構)は柱の曲げ破壊および柱梁接合部のせん断破壊先行型,1体(ト字形架構)は梁曲げ破壊先行型となるように試験体を設計している.架構骨組の載荷実験を行い,その結果を考察することにより,以下の知見を得た.1)軸力比が0.4の高軸力を受ける場合,柱に芯鉄骨を挿入した混合構造骨組の耐震性能はRC構造骨組の性能より優れている.2)梁の曲げ破壊先行型の骨組では,柱の芯鉄骨の存在により柱梁接合部が破壊されることなく,安定した挙動を示す.3)芯鉄骨を柱の内法区間のみに挿入した場合,芯鉄骨端部でのコンクリートの破壊により芯鉄骨に期待する軸力を十分に負担させることができないことがある.芯鉄骨に期待する軸力を確実に負担させるためには何らかの補強が必要であり,その補強法を考案する必要がある.
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