研究概要 |
本研究は,梁が先行して降伏する鋼構造骨組を対象として,設定された地震入力に対する構造物の損傷を,静的手段のみで予測する方法を確立するものである.本年度は,主に下記の3課題を行った。下記(1),(2)は,1自由度系の地震応答に関するものであり,(3)は,梁降伏型鋼構造骨組の動的崩壊機構に関するものである. (1)損傷に寄与する地震入力エネルギーの定量化:擬似速度応答スペクトルを用いて損傷に寄与する地震入力エネルギーを予測する際の,地動継続時間の限界を明らかにすると共に,実地震記録の主要動の有効継続時間を定量化する方法を示した.この成果は構造工学論文集(2002.3)に掲載予定である. (2)1自由度系の応答予測:複数の完全弾塑性要素と1つの弾性要素の並列結合で表される任意のポリリニア型荷重-変形関係をもつ1自由度系を考察の対象にして,最大変位を予測する方法を確立した.この成果は京都大学防災研究所研究発表講演会(2002.2)で公表している. (3)動的崩壊機構特性と梁の必要塑性変形性能の関係:各層層せん断力応答の位相のずれを考慮して,重層骨組の動的崩壊機構特性を同定する手段を提示し,その動的崩壊機構と強震下で梁端に生じる塑性変形との相関関係を明確にした.この成果は,日本建築学会構造系論文集(2001.9)に公表している. その他,歪硬化による梁端の耐力上昇の定量化に関して,京都大学防災研究所吹田啓一郎助教授と共に検討を進めると共に,履歴型ダンパーによる制震効果の定量化についても研究を進展させた.
|