研究概要 |
1.沖縄県におけるピロティを有する鉄筋コンクリート(RC)造建物の構造実態やブロック壁体の使用状況を明らかにするため,過去20年程度の構造図の調査,最近建設された約500棟の設計図書の調査,および那覇市内におけるピロティ建築物の外観調査を実施した。その結果,沖縄県では1971年の新耐震設計法施行後も、かなりの割合でピロティを有するRC造建物が建てられていること,最近建設された建物の約80%がRC造であり,依然としてピロティ建築物の割合が高いこと,ピロティ建物の用途としては専用住宅や集合住宅が多く,2階以上に間仕切壁としてブロック壁体が配置される傾向が強いこと,また構造計算においてブロック壁体の剛性や耐力が無視され,純ラーメン構造として計算される場合が多いことが明らかとなった。 2.昨年度収集した大分市内の既存RC造ピロティ建物7棟の構造図面をもとに,これらの建物の耐震診断,静的漸増載荷解析,地震応答解析を昨年度に引き続き行った。その結果,完全ピロティや片妻ピロティの建物では大地震時に限界層間変形角を超える応答が生じる場合が多いことなどが明らかとなった。また,耐震診断,静的漸増載荷解析,地震応答解析それぞれによる耐震性能評価結果を比較検討した。 3.コンクリートブロック壁体を先積みし,その後周辺のRC造柱・梁を打設した耐震壁試験体に対する実験を行った。その結果,壁体を型枠ブロック造とした耐震壁は,比較のため製作したRC造一体打ち耐震壁とほぼ同程度の最大耐力および変形性能を有していること,壁体に空洞ブロックを用いた耐震壁では,型枠ブロック造耐震壁やRC造耐震壁と比較して,70%程度の最大耐力を有することなどを確認した。 4.ピロティを有するモデル建物を設定し,ピロティ階をブロック壁体により補強した場合の耐震性能向上効果について,架構の静的漸増載荷解析および地震応答解析を行い検討した。
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