研究概要 |
本研究では,データベース的機能に汎化能力を併せ持つシステムであるニューラルネットワークを用いて,様々な環境下においてコンクリート表面を介して内部に浸透する塩化物イオン量(浸透フラックス量)を求め,これを境界条件として有限要素法にてコンクリート内部の塩化物イオン量分布を求める手法を開発した。 開発したニューラルネットワークシステムは,コンクリート中に蓄積される塩化物イオン量の経過時間変化を表す関数を求めるシステムである。このシステムより求めた関数を時間で微分するとコンクリート表面における塩化物イオンの浸透フラックス量が求まり,塩化物イオン量浸透解析の境界条件となる。なお,このシステムのインプットデータは,コンクリートの設置された環境(飛沫帯,海中,陸上大気中,水掛かり有無)の選択と水セメント比である。一方,コンクリート内部の塩化物イオン量を求める有限要素法は昨年度に開発したものをさらに改良し用いた。 ニューラルネットワークと有限要素法を併用した塩化物イオン量浸透解析法を用いて,暴露試験体中の塩化物イオン量分布を予測し,実測値と比較したところ良い一致を得た。また,昨年度開発した飛来塩分量解析手法により求めた飛来塩分量を基に,陸上大気環境下にあるコンクリート中の鉄筋位置での塩分量を予測し,鉄筋コンクリート構造の劣化予測をおこなった。その結果,水セメント比60%のコンクリートにおいては,海岸から500m離れた場所でも,かぶり9cmの鉄筋位置で腐食限界塩化物イオン量(1.2kg//m^3)をこえる場合があることが分かった。 また,本研究では,電食実験と乾湿繰返し塩分浸透促進試験を行い,鉄筋腐食状態について考察した。ここでは,分極抵抗,自然電位,コンクリート抵抗の測定も行った。その結果,腐食限界塩化物イオン量1.2kg//m^3を超えてから腐食速度が加速する事が確認された。
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