研究概要 |
強震時に軸力と複曲率曲げを受けるH形断面柱材のエネルギー吸収能力は曲げ捩れ座屈によって限界づけられる場合がある.塑性域における曲げ捩れ座屈に関するこれまでの研究は,一定軸力下で単調曲げを受ける場合を対象に行われて来た.しかし,多層骨組の柱材は,地震時に変動軸力と繰り返し曲げを受ける.変動軸力は,転倒モーメントと鉛直振動によりもたらされる.本研究では,地震時に柱が受ける荷重状態を考慮して,種々の載荷条件に対する実験を行い,曲げ捩れ座屈によって限界づけられる柱材の終局耐力とエネルギー吸収能力について考察した. 実験における載荷方法は次の4種類である.(1)一定軸力下で単調水平載荷,(2)一定軸力下で漸増繰り返し水平載荷,(3)変動軸力下で漸増繰り返し水平載荷,(4)ランダム変動軸力下でランダム繰り返し水平載荷 一定軸力下で漸増繰り返し水平載荷を受けた試験体の荷重変形関係から得られた骨格曲線と,一定軸力下で単調水平載荷を受けた試験体の荷重変形関係を比較すると,骨格曲線の最大耐力およびそのときの変形は,単調載荷時のそれらより小さい.局部座屈により耐力が限界づけられる場合は,地震応答時において想定されるように主要な塑性繰り返し数が数回程度のとき,繰り返し実験から得られる骨格曲線と単調載荷曲線はほぼ一致することが知られている.曲げ捩れ座屈で耐力が限界づけられる場合は,局部座屈により耐力が限界づけられる場合と異なり,最大耐力が塑性履歴の影響を受けることが分かった.これは,塑性曲げ捩れ座屈の場合,内力の上昇あるいは塑性化領域の拡大のみならず強軸繰り返し曲げによる塑性変形の累積によっても座屈変形が進行するためである.変動軸力および塑性曲げ履歴が,座屈耐力とエネルギー吸収能力に及ぼす影響について明らかにした.
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