研究概要 |
本年度は,これまでに行った視覚刺激を考慮した水平振動感覚,被験者の意識や状況の違いが知覚閾に及ぼす影響に関する実験の結果を整理し直し,水平振動の物理量とユーザーの状況とを対応させて説明する資料を模索した。建物の固有一次振動数と応答加速度最大値で評価することを想定し,これらの水平振動の物理量と心理評価や知覚閾の累積確率との対応を軸として性能レベルの説明を試みた。その結果,心理評価などのユーザー側のばらつきをふまえて,揺れ性能レベルのグレードを説明することができた。ここでは,様々な条件における水平振動に対する心理評価や知覚閾を同じ座標軸で表し,ユーザーの状況を多角的に表現することからわかりやすさを追究するものである。これらの資料を基にして,心理評価と知覚閾とを対応させて揺れ性能レベルを説明することができ,建築学会の居住性能評価指針におけるH-1〜H-4の評価曲線を,ユーザーの状況と対応させて説明してみた。 一方,水平振動に対する居住性能をユーザーにわかりやすく説明するために,設計の現場で性能説明として実際に行われているユーザーとのコミュニケーションや,居住者が水平振動に対する性能を説明する上で実感できる表現などに関して,並行して調査を進めている。現状では,ユーザーと専門家の間に有効なコミュニケーション手段がないため,両者の対話をすすめる資料の作成が急務である。ユーザーがより取り組みやすいインターネットを用いた方式によるアンケートなども検討しており,次年度以降の本調査実施へ向けて準備している。
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