研究概要 |
屋根瓦に作用する風力を把握することは,屋根瓦を含めた住宅の耐風性能設計および屋根瓦の飛散による二次的被害防止のために重要である.しかし,屋根瓦に作用する風圧力を縮尺模型による風洞実験で測定することは,実験相似則などの解決しなければならない問題があり,容易ではない.そのため,現在まで屋根瓦の耐風設計用の資料は十分に整っているとはいえない. そこで,本研究ではまず耐風設計用の資料充実のため,実大の瓦および建物を用いて自然風中において屋根瓦の表裏に作用する風圧測定を実施した.風圧測定にはJ形瓦とF形瓦を用い,瓦の位置,風向角による風圧,風力変化について検討した. その結果,以下のことが明らかとなった.(1)J形瓦とF形瓦の風向に対する各風力係数の定性的な変化は類似している.(2)屋根に対し斜風となる場合,大きな浮き上げ力が瓦に作用する.(3)ピーク風力に対して平均風力は極めて小さく,瓦に作用する風力は変動成分が支配的である.(4)瓦に作用する外圧と内圧の風圧変動は低振動数側では相関が高いが,高振動数側では相関が低減する.また,この高振動数領域では内圧のパワーは外圧のそれと比べて十分小さい. また,瓦の静的載荷実験により作用する荷重と瓦先端に生じる変位との関係について調査し,先の風力測定結果と併せて浮上りが発生する風速を推定した. さらに,本研究により瓦の飛散予測において以下のような課題が明らかとなった.(1)屋根瓦は周辺の瓦による拘束を受けるため作用する風力は空間的な相関を考慮して評価する必要があり,風力の空間相関を実測により明らかにする必要がある.(2)浮上り時の風力は静止時のそれと異なり浮上りの状態に依存すると考えられる.そのため,瓦にばたつきが生じて飛散にいたるまでの検討を行うためには,浮上り時風力の変化を明らかにする必要がある.
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