研究概要 |
建築壁体の耐久性向上は,地球温暖化防止にも大きな貢献が期待できる重要研究課題でり,熱・水分性能設計とは密接な関連がある.国内でも,平成12年9月の新建築基準法施行により,建物の耐久性表示を含む住宅性能表示制度の創設と新築住宅の契約に関する瑠疵保証制度の充実が手当てされ始めており,建築壁体の耐久性評価に関する汎用数値予測法の開発が待望されている,特に,鉄骨複合壁体の耐久性評価では,長周期の熱・水分同時移動性状を考慮した,鉄錆発達の数値予測法が主要な検討手段となる. ここでは,鉄骨躯体が晒される微気候の温・湿度変動,NOX・SOX濃度と等価な海塩相当付着量の数値予測に基づく環境腐食モデルとそれによる耐久性評価法を開発し,その予測精度と適用限界を検討することを目的として,今年度は以下の研究を実施した. 1)温・湿度変動,海塩相当付着量を劣化外力とし,鋼材の発錆と腐食侵攻を説明する数式モデルを文献調査し,この結果を踏まえて鉄骨建築壁体の耐久性能予測という観点から,妥当な計算精度・効率を有するものを吟味した.また,腐食後の鋼材の熱物性変化の取り扱いについても検討した. 2)空気の流れは層流として,2次元鉄骨複合壁体に対する非線形非定常熱・水分・空気同時移動問題のDR境界要素解析法を開発した.また,その妥当性についても部分的に検証した.一定要素に関する境界積分の解析的評価式の開発も含んでいる. 3)1)と2)の成果を併せて,温・湿度,海塩相当付着量に関する周囲環境条件から,鉄骨躯体に作用する劣化外力を計算し,それに基づく鋼材の腐食侵攻予測プログラムを開発した.これは,計算された熱・水分・空気場から,一方向で腐食侵攻を計算をする半連成プログラムである. 4)2次元熱・水分・空気同時移動のDR境界要素解析法の非定常・非線形による反復計算の効率的処理法を検討し,鋼材の腐食侵攻予測結果の基礎的な検証をした.
|