火災発生による煙流動は一義的に定まらず多様な換気系路を取る。本年では階段室とアトリウムを有する(1フロアタイプの)3階建および5階建の建物について、換気回路網(1ゾーン)モデルおよびCFD(計算流体力学)の二つの計算法による浮力換気の性状と換気多様性を検討した。 現実的には発熱室では熱源上に上昇プルームと強い温度成層ができるが通常の換気計算では完全拡散・室内一様温度に基づきこの現象を無視しており換気回路網計算の適用性が疑問視されることから、まず2階建て3室の建物について同一条件でCFD計算との比較を行った。両者ともに2つの換気モードが得られ多様性の検証を行った。二つの換気モードの発生がカオス性状を呈することも示した。(以上の研究は本年度に、韓国およびリオデジャネイロの二つの国際シンポジウムおよび日本建築学会近畿支部ならびに同学会全国大会で発表した。) 換気回路網での懸念があった近似化の一つに階段部分の流れの簡易モデル化がある。本研究において、階段室を各階フロアで仮想的に区画し上下階の抵抗をフロアに集中させたモデルの妥当性を検討した。5階および3階の建物について、階段室の等価な流量係数(αA)を換気回路網モデル、CFDモデルで計算し階段室αA=0.2にすると非常に良い一致を見た。この値は他研究者による実験値とも一致した。さらに、回路網モデル計算においては4種類の換気モードが現れるが、開口内に中世帯があり対向流が生じる場合にはこの対向流を考慮に入れた計算法によって、換気多様性の消滅に効果を顕すことの知見も得た。(以上の研究は本年度に空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会論文集にて報告した。)
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