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昨年度には、多数室の換気・排煙システムにおいては同一建物、同一物埋条件でも多様な換気モードが不確定的に発生することについて回路網モデル(ネットワークモデル)を用いて総論的研究を行い避難安全性について建築計画段階での換気多様性予測の重要性を指摘する研究を行った。
本年度にはより具体的な問題を取り上げ、換気多様性を見失いがちな対称形建物での非対称の換気モードについて検討し、さらに回路網モデルの有効性を示唆するために一つに開口での対向流(二方向流れ)のある場合の計算法および対向流が生じる場合の換気モードの違いを研究し、二つに階段室の火災煙の流れを回路網モデルに取り込む手法を提案しCFD解析などによってその妥当性を検討した。研究内容を以下に示す。
対称形建物に対して対称換気を行っても、(対称形の換気モードも生じる可能性はあるが)非対称形の換気モードの方が生起しやすいことを事例によって示し、安易に対称モードを予測することの危険性を指摘した。
換気回路網モデルは低容量のパソコンで短時間に計算できる予測手法として強力な方法であるが、開口での対向流、室内温度成層を認めていないことの疑問点を含んでおり、本研究において対向流を組み込むモデルを開発し、CFD解析と並行した実施計算例でもってその有効性が失われないことを示した。
階段室の火災煙伝搬が避難安全性を脅かすことは新宿火災でも示されている。しかしこれまでの換気回路網モデルでは階段室のモデリングが不透明であった。本研究により階段室の各階床面に等価な抵抗の開口を持つ仮想面を想定することで回路網モデルでもって十分に建物換気の予測が出来ることを示した。等価な抵抗値はCFD解析および他研究者の階段室圧力分布実測値をもとに同定した。
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