街路照明の推奨照度値は、現状では交通量と住宅地域・商業地域の区分で定められており、街路の周辺環境によって定められていない。また、基本的に高い照度を確保することが安全性の高い街路照明であるとする傾向にある。しかし、街路を必要以上に高照度で照明することは、エネルギーの浪費になるばかりでなく、周辺環境への光害にもつながりやすい。本研究では、より低照度になる街路の光環境の条件として、街路と周辺建物の関係ごとと、照明の種別ごとに調査するものである。本年度は、街路に対する自然監視性の有無を条件として、隣接する塀の高さや建物と街路との距離、建物内部の窓明かりに着目して取り上げ、また照明の種別として、街路灯の高さと間隔を取り上げた。これらの変数を1/50の縮尺模型で統制することによって、不安を感じない街路照明の明るさを実験的に検討した。 実験の結果、得られた主な内容は下記の2点である。 ・不安を感じないために必要とされる街路水平面照度は、低い塀の街路や窓明かりがあるなどの自然監視性の高い街路で低くなる。窓明かりによる低照度の効果は、高い塀よりも低い塀の場合に強くなる。 ・足元灯は、全体的にポール灯に比べ街路水平面照度や路面輝度を低く抑えることができる。自然監視性の高い街路では足元灯の方が光束量は抑えられ、自然監視性の低い街路はポール灯の方が光束量を抑えられる。 以上のことより、夜間街路の光環境は、街路と住宅との関係性を考慮して計画することが重要であることが分かった。街路の条件によっては、各住戸内部の点灯などによって過剰な街路照明を取り払うことが可能であることが示された。
|