前年度行った縮尺模型を用いた街路照明の評価実験を補足する実験と調査を行った。実験は、街路を歩行中の映像を被験者に提示しその印象を評価させることで、照明の種別や時間変化の特性が歩行者の心理にどのように関係しているのかを明らかにするものである。歩行中の映像の撮影は、暗室の実験でCCDカメラを歩行者の視点高さで移動させることで得た。カメラの移動速度は実スケールで約2.2m/s、移動距離は65mである。実験の結果、足元灯は不安感を感じさせないためにはある程度有効だが、街路の見通しを確保するにはあまり向いていないことが分かった。また、輝度の低い場所から高い場所へ移動する際、歩行者は不安感が減少する傾向にあった。このような不安感の減少は歩行者の犯罪に対する不安を下げるだけでなく、犯罪者にとっても姿をくらましにくいという利点があり、防犯に考慮して街灯照明を計画するときに留意する必要があるといえる。 また、20代の女性を対象に、夜間住宅街照明の不安感についてのアンケート調査を行った。項目は、歩行中に不安に感じる場所と安心に感じる場所について、その周囲の環境をできるだけ詳細に記述することである。その結果、必ずしも街路の明るさだけではなく、街路で聞こえる住宅内部からの音や光によって安心感がもたらされることが多いことが確認された。前年度の本研究の結果をある程度支持するものである。
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