本研究の研究成果は以下のとおりである。 松本は、研究計画に従い、まず常温時の挙動解析法を検討し、すでに提案したモデルを用いることにより雨水、風圧の条件下での変動予測が可能であることを確認した後、凍結条件下における含氷、含水量の変動予測モデルを提案した。しかし、当初計画した凍結解析における、外部加重下における応力の影響に関する一般化モデルの導出はできなかった。またモデルの妥当性検討を行うために、ALC材について、基本的な外界条件下での実験を行い、解析モデルによる解析結果と比較した。含水率、含氷率の分布とその時間経過について両者はよい一致を示しており、モデルの妥当性が示された。以上の結果より、凍結条件下を含む各種条件における材料内含水、含氷率の予測が可能であることを示した。 佐藤は、建築壁体の含水率変動にともなう変形性状に関する検討を行った。木材の変形は、主としてハイグロスコピック領域内にあることがよく知られている。従って本研究では主としてこの領域についての挙動を、非線形蒸気拡散支配型の解析モデルを用いて、高断熱型壁体について変形性状の年間変動を解析した。これを行うために、材料の平衡関係、水分による膨張係数の測定を行い、得られた結果を用いて解析した。検討の結果、木製スタッドで、変形の最大は冬期に生じる事、その最大値は2〜3%程度であることがわかった。また変形性状における異方性の影響についても、検討した。さらに、スタッドへの外部荷重(圧縮荷重)の影響を明らかにするための実験を行った。ハイグロスコピック域、結露条件下(スタッド表面飽水)のいずれの場合についても、測定結果にかなりのばらつきが生じ、応力の明確な影響は生じなかった。この問題については、なお検討が必要である。
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