本研究は、大気中の微小な浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter)の文化財への影響を主に化学的側面から検討し、総合的に博物館内浮遊粒子状物質に関する指針値策定のための評価法の公定化を目指したものである。本年度は 1.文化財施設およびその近傍の浮遊粉塵の挙動を、粉塵計で測定した。また、air-O-sampler-(R)でサンプリングし、光学顕微鏡の直接観察で粉塵の構成物組成を検討し、季節変化を検討した。その結果、空調のある施設でも粗いフィルターで外気処理を行っている施設では、粉塵の構成物組成は外気の影響を受けて季節変動をすることが分かった。また吸い込み口付近での粉塵濃度には大きな分布があり空気のよどみと大きな相関があると推定された。また、実際の室内では観客などの移動体の影響が大きく、粉塵濃度予測が困難であることが分かった。 2.文化財の構成材料である金属材料、画材、紙への影響を把握するため、曝露試験を開始した。 3.経年絵画試料に堆積した粉庭を採取し、その構成物組成について、EPMA、イオンクロマトグラフなどで分析した。一部、絵画下地の構成元素を含む粉塵もあり、何らかの元素移動が接触面から起こっていることが推定された。
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