ドイツにおける自治体レベルの住民投票制度は、州によって異なる。都市州を除いたドイツの全13州につき、制度とその変遷を互いに比較検討した結果、住民投票制度発祥の地であるバーデン・ヴュルテンベルク州の制度が基本となり、住民参加をさらに容易にする形で拡大してきた状況が明らかとなった。 実際に住民投票に至るまでには、必要な請求署名、住民投票の許容性、そして住民投票の得票という3つのハードルがある。請求署名と投票の得票は量的なハードルであり、住民投票の許容性は質的なハードルである。許容性は判断が微妙なケースも少なくなく、このハードルの結果として意思表明に適切な時期を逸する場合もあるので、質的ハードルは単純で負担が少ないようにすべきである。量的なハードルの高さをどうすべきか一概には言えないが、請求署名より投票での得票で条件が厳しくなる。ドイツにおいて、バーデン・ヴュルテンベルク州の経験に学び、「絶対得票率」を成立要件とする考えが標準になっている点は、たしかに合理的である。 住民投票は直接民主制であり、間接民主制である議会との関係も問題となるが、ドイツにおける住民投票の実態から、住民投票は代表民主制に代わるものではなく、むしろ議会を活性化する側面を有していることがわかる。この意味で、わが国においても、住民投票を導入することは大きな意味を有すると考えられる。
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