研究概要 |
本研究はこれまでに、日米の比較調査を通して中古住宅需要意識や住宅の寿命観が住宅の管理行動に及ぼす影響を考察することを中心に進めてきた。明らかになったことを以下に要約する。 (1)日本の中古戸建住宅需要は極めて小さく需要者が分譲集合住宅と競合している。(2)米国では繰り返し住宅を売買するが、日本の売買経験は少ない。(3)日本の住宅需要者は中古戸建住宅を考慮するが、情報が不十分なので建物の安全性能、設備性能に不安を持ち最終的に「安物買いの銭失い」に対する警戒心が働く。そのために日本の中古戸建住宅の購入者は当該住宅を「仮の宿」ととらえ、新築戸建、建替、分譲集合住宅への通過点と考えている。「仮の宿」意識が強い人は,中古住宅の性能に不安をいだく人でもある。(5)米国人は住宅の購入は大きな投資であると考える。古い住宅の歴史的意匠や、職人の技術が投資の要因である。(6)自分の住宅に対する信頼感と中古住宅情報への信頼感は密接に連動する。(7)米国の住宅市場は中古住宅市場の透明性と、経済表価を客観的にする仕組みを持っている。その結果住宅の取得者は再売却の市場価値を予測できる。したがって、(8)住宅の商品価値に関心がある。再売却の行動は住宅を買う時から計画的であり、建物検査の実施率が高い。一方日本では転居指向の人ほど検査の実施率が低い。それに対して、日本では中古住宅に対する客観的評価がなく、住宅需要者の中古住宅市場に対する信頼性が低い。それは中古住宅を買うことを躊躇するだけでなく、現住宅の市場価値に対しても評価が低い。(9)現住宅の維持保全に対する関心は住宅をどのような資産と考えるかという意識と強い相関がある。日本の場合、永住指向者ほど住宅を資産と考えており住宅の保全に関心がある。米国は再売却時の価値を高めるために管理に注意を払う。 以上から、既存住宅の経済価値と住宅管理行動(意識も含む)には強い相関関係があることが認められた。現在は以上の結果を追認する調査に入っている。
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