1.ニューヨークの住宅事情に関する統計分析を行い、需給関係の逼迫、アフォーダブル住宅の供給の減少、低家賃住宅のストックの減少、所得階層・人種による格差拡大、等の傾向が明らかになった。また同時に、ホームレスの増加はアフォーダブル住宅の払底を基礎的な背景として生じた現象であること、とくにインナーシティでの住宅事情の悪化が主要因であることが分かった。 2.ニューヨークの住宅政策に関する文献調査を行い、低所得者向けの政策が縮小したこと、連邦政府からの補助金が急激に減少したこと、等を明らかにした。公共住宅の供給は停止に近い状態になっている。補助住宅の既存ストックは民間所有者と政府の契約関係の終了が近づき、その存在自体が不安定化している。家賃補助の供給は一貫して減少してきた。住宅関係の公的施策の圧縮はホームレスを増加させる要因の一つを形成していると考えられる。 3.ニューヨークの現地調査を行い、サポーティブ住宅の実態とそれへの政策支援の内容を把握した。この結果、SROを改造し、そこに社会サービスを結合するサポーティブ住宅はホームレス対策の有効な施策として位置づけられていること、ホームレスへの政策支援は伝統的な手法からサポーテイブ住宅への支援に重心を移行させたこと、サポーティブ住宅の供給主体である非営利組織はネットワーク組織を組み上げ、それを通じて技術改善・情報収集・政府交渉を拡張していること、等が明らかになった。 4.全体として、ホームレス対策は、「福祉」施策として公的補助をダイレクトに投入するのではなく、ホームレス自身の「自助努力」を引き出し、それへの支援を行う形態へと変化している。このトレンドをどのように評価するのか、については学者・専門家のなかでは見解が分かれている。
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