1.連邦政府の住宅政策、及びニューヨーク市の住宅政策をホームレスの問題に関連づけて分析し、連邦レベルでの住宅予算の縮減、とくにセクション8による家賃補助の削減がニューヨーク市の住宅政策のあり方に強く影響していること、ニューヨーク市ではホームレスのための重要な住宅資源であったインレム住宅の在庫が減少し、インレム住宅を増やす政策が停止したことから、ホームレスへの住宅供給が減少していること、そうした住宅政策の後退のなかで、サポーティブ住宅はホームレス対策の重要な位置を占めること、等が明らかになった。 2.ニューヨークのサポーティブ住宅に関する現地踏査を行った。SRO住宅の改造に社会サービスを接合するサポーティブ住宅は、住戸の機能性、立地の利便性、社会サービス支援を特色とし、ホームレスの救済に関して重要な貢献を果たしていること、約10年に及ぶプロジェクトの蓄積経験を経て、サポーティブ住宅の供給は有力な政策オプションの一つとして発達してきたこと、が明らかになった。しかし、住宅政策の一般的な縮小につれて、サポーティブ住宅への資源配分は限定される傾向にある。この意味において、ホームレスを対象とした特別の施策は独立した存在ではありえず、住宅政策全体の動向からの制約を強く受ける、とみることができる。 3.サポーティブ住宅は精神障害、及びHIV/AIDSのホームレスを対象としたものである。換言すれぱ、精神障害、HIV/AIDSではないホームレスに対する政策対応はきわめて乏しい。このことは、精神障害等の問題をもたないホームレスに関しては、あくまで自立を求めるというのが政策の基本方針であることを示している。ホームレスは公共的な救済の対象なのか、あくまで個人的に自立の努力をすべき存在なのか、という原理的な論点がある。
|