研究概要 |
本研究は,海外の建築プロジェクトにおける建築生産関係主体間のクレームレターの収集・分析を通じて生産関連主体間のリスク分担のメカニズムを検証し,役割分担のありようを提言することを目的としている。今年度の主な成果は下記の通りである。 (1)クレームの発生,解決メカニズムに関する理論的検討 前年度に引き続いて,主に海外の建築クレームに関する既往研究・文献から建築クレームのタイプ,原因,特徴を整理した。最近の契約管理の理論的研究である大本俊彦の「建設請負契約の構造と紛争解決に関する理論的研究」をもとに契約管理についての理論的検討を行い,本研究のとりまとめの方向に整理検討した。 (2)建築プロジェクトにおけるクレームレターの実態分析 前年度に引き続いて,典型的な海外の建築プロジェクトの契約管理の実態を収集したクレームレターに基づいて実態分析を行った。具体的内容は以下の3つ。(1)前年度実施したシンガポールの教会建築プロジェクトの継続分析,(2)台湾の工場新設プロジェクトのクレームレターの分析,(3)海外の建築プロジェクトの契約管理実態と比較する意味で,日本の大学キャンパス建て替えプロジェクトの契約管理に関する書類の収集分析を行った。なお,予定していた米国の工場増築プロジェクトのクレームレターの収集分析は当事者との調整の概要しか入手できなかった。また,海外の建築プロジェクトの契約管理を担当した専門家にインタビューを行い,特に英国における契約管理の実態と日本への展開可能性について整理した。 (3)クレームレターに基づく交渉プロセスの法的妥当性の検討 上記(2)「クレームレターの実態分析」で整理分析した典型プロジェクトにおける各主体間のクレームレターのやりとりを法的側面から検証を進めている。とりわけ,裁判以外の準司法的な対応との比較を行う上での予備的検討を行っている。
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