本研究は昭和40年代後半に首都圏郊外で大手開発業者によって開発された建て売り住宅・団地の変容の要因を明らかにすることを目的とした。これは欧米に比べ短命なわが国の戸建て住宅の延命に役立つと同時に、現在のわが国の供給住宅の約1割を占める建売住宅・団地の変容過程を明らかにすることである。首都圏からの距離が等しい、同時期に一斉分譲された7団地のアンケート調査を中心に13種の調査を行い、以下のことを明らかにした。 1)分譲形態、延べ床面積、協定有無等々の開発条件の違いは入居時にはさほど違いが見えないが、30年後には、住宅改変状況や家族構成、住戸植栽の状況などに違いを生じさせる 2)住宅改変は新築後の年数より、子供が中学生になった時や世帯主が50才代になった時などライフステージ上の変化時の方が強い関係がある 3)中古住宅購入者は新築建売購入者より家族形態が多様である。購入時の築後年数と住宅改変までの年数は逆比例し、新築後15年以上経過した住宅では建替え率が高くなる 4)住戸の緑の量は手入れの度合いは関係があるが、プランターの数はどちらとも関係しない 5)世帯主が高齢になるほど緑の量が多く、手入れも良い傾向がある 6)南道路の家、街路の角やT字路の突き当たりにある家の方がそうでない家より緑の量が多く、手入れも良い 7)建売団地は宅分団地より、協定団地は協定のない団地より緑が多く、手入れも良い。 8)住宅改変状況、緑の量と手入れの度合い共に近隣の影響をうける「同化」現象がある。
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