研究概要 |
「自然(天然)の干潟を保全する政策」と「人為的に人工なぎさを創造する政策」には、市民の捉える経済的価値に違いがあるかどうかを明らかにするための調査・解析を行った。仮想政策の対象地を、東京湾および伊勢湾に設定し、保全すべき天然干潟としては東京湾の「三番瀬」と伊勢湾の「藤前干潟」を、また、人工干潟造成についても東京湾と伊勢湾で実施することを想定した。CVMのためのアンケート調査は、仮想政策対象海域に面した東京都江戸川区と愛知県名古屋市とし、これら計8つの仮想政策に対してそれぞれ個別の住民に回答させる形式で行い、延べ1475票の有効回答が得られた。 CVMによって,それぞれの仮想政策に対する支払意志額を算定し,そこで得られた金額や賛成理由・反対理由などを相互に比較した結果,次のような知見を得ることができた。(1)天然干潟の保全だけでなく人工なぎさ造成の価値も、当該海域近傍の住民だけでなく、そこから300km遠方の住民からも認識されている。(2)人工なぎさ造成に対する価値認識は、天然干潟の保全の価値に比べて、当該海域からの距離に応じた減衰が顕著である。(3)天然干潟に対する認識と同様に、人工なぎさ造成にも将来世代へ自然環境を残したいという遺産価値として高く評価している。(4)既存の先行事例の存在やその効用を認知している人は、天然干潟とほぼ同等の価値を人工なぎさにも見いだすことができる。
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