本研究は、隠居慣行の継承と変容の様相を明らかにし、それを通して今後の隣居型住宅の意義と限界およびその望ましい空間形態と居住方式について考察を行うものである。その結果、1.隠居慣行は現在も継承されながらも、社会的・経済的条件の変化、生産・生活の合理化や近代化に伴い、変質を余儀なくされ、その継承の様相は地域によって、特性がみられることが明らかとなった。 それらは以下の4タイプに大別される。 タイプI-1:分棟・別食・別計の隠居慣行を色濃く継承し、近居が多くみられる。 タイプI-2:分棟・別食・別計の隠居慣行を色濃く継承している。 タイプII:分棟・別食・別計の相互独立した生活から、分棟から続棟や同棟へ別食から共食へ変化するなど、隠居慣行が変質しながらも継承されている。 タイプIII:本家と隠居屋に分住するものの、生活の内実はかなり同棟に近く、隠居慣行を継承しながらも大きく変化している。 タイプIV-1:共食・同計の「消極的な隣居」から別食・別計の「積極的な隣居」やより干渉されずに独立した生活が行える近居も出現するなど隠居慣行が変質しながらも継承されている。 タイプIV-2:戦前の同棟・共食・同計から、戦後は分棟・別食・別計に移行し、より独立した生活が行える近居も出現している。 2.隠居慣行が継承されている地区における親子の居住領域構成は、近居・分棟・続棟は次の6タイプ、同棟は2タイプの計8タイプに大別される。 (1)相互完全独立型(2)相互独立型(3)相互独立訪問型(4)訪問交流型 (5)訪問ケア型(6)相互交流型(7)平面分離型(8)上下分離型 3.親子二世帯居住の親子は現在の居住形態を評価しつつ、より相互独立した生活が行える居住形態を志向している。親子が志向する親子二世帯の居住形態は、分棟居住が最も多く、68.6%を占め、次に同棟居住が13.3%、近居が12.4%である。
|