研究課題
本研究は、晴眼者の視覚情報優位の環境・空間認知に対し、視覚情報を看取でき難い視覚障害者の環境・空間認知について、具体的な環境条件下における視覚障害者の行動と環境・空間との対応関係に関する基礎的知見を得ることを目的としたものであり、昨年度検討を加え作成した調査マニュアルに基づき、筑波技術短期大学視覚障害関係学科の全盲の新入学生4名を対象に、ヒヤリングおよび歩行調査を行った。歩行調査は、点字ブロックが敷設されている大学キャンパス内において、寄宿舎、校舎棟、図書館、診療所、大学会館、体育館等の主要諸室を結ぶルートを設定し、ポイントとなる場所での建物群の位置関係、位置確認情報要素等の聞き取りを含め、歩行状況全容をビデオに撮るという方法で、入学後2週目、4週目、6週目、8週目、10週目および8ヶ月目の調査を行った。これまでに得た知見としては、失明の時期等によって個人差があるのは当然であるが、入学当初と中期では、白杖の、使い方、点字ブロックの確認の仕方、歩幅等で明らかに変化がみられた。白杖の使い方では、振りの大きさ・回数、床面の触り方・音の出し方などに、また点字ブロックの靴底での確認の度合、交差点ブロックでの方向確認の回数などにみられた。それら変化にともないキャンパス内点字ブロックの敷設構成、建物群の位置関係の認知度も上がる傾向がみられ、既知空間エリアの漸進的な拡大がうかがえた。しかしながら、行く頻度が殆どない建物へのルート、位置関係等については殆ど認知されてなく、このような未知エリアが今後どのように認知されていくのか継続して調査していきたい。