19世紀に開始される東アジア、東南アジアの近代建築は、現在の国民国家によってそれぞれ研究、分析されている。しかしながら、建築家の移動、メディアを介した情報の移動によって、国境を越えたあるまとまり-建築文化圏が存在し、そして、それは、むしろ面よりも、線的なネットワークの形状をしているのではないかというのが、本研究の仮説である。 2年にわたる本研究の具体目標は、イギリスの王立建築家協会の会員RIBA会員の世界的な分布を、動的に把握することにある。19世紀半ばに創立されたこのRIBAは、イギリス帝国の拡大と共に世界中に会員を送っていた。東アジアでいえば、上海、シンガボールがそのセンターとなる。 第1年度の本年は、第二次世界大戦までのRIBA会員名簿と加入甲請票をすべて収集した。また、RIBA会員の具体的な行動を知るために、シンガポール、香港での資料調査を実施した。また、束アジアには当時、フランス人建築家も存在し、その動静を把握するため、パリのフランス建築家協会を調査した。 第2年度は、収集した資料の分析と補足調査を実施する。
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