研究概要 |
本年度は9月1日〜18日に「シエナ南東部のクレーテ地方」と「エミリア・ロマーニャ州に接する2つの山岳地域」を対象とし,実施調査と資料・史料の収集を行なった。調査の概要と研究によって明らかになった点は以下のようなものである。 1 シエナ南東部のクレーテ地方は,トスカーナ州では極めて特異な風景を形成している。ラポラーノ・テルメ等に代表される歴史的温泉保養地域,ヴェネディクト会の総本山モンテ・オリヴェート修道院,サンタンティモ修道院等の宗教的拠点も,中世以降成立した小都市が形成する地域の核をなしていることが明らかになった。 2 エミリア・ロマーニャ州に接するセルキオ川上流域のガルファニャーナはアペニン山脈の北の国,フェラーラのエステ家領の小都市と,フィレンツェ協和国領の小都市,ルッカ共和国,ピサ共和国の所領の小都市などが,近接している点に特徴がある。カステルヌオヴォ,バルガ,カステルヴェッキオ等の小都市は,個々の政治的支配の構造が建築の形態・空間,都市構造に反映されている。 3 エミリア・ロマーニャ州,リグーリア州に接するマグラ川流域のルニジアーナは,ティレニア海とフランチジェナ街道が歴史的な地域形成に大きな影響を及ぼしてきた。政治的側面からは,マラスピーナ家,フィレンツェ共和国の対決が最も重要であるが,加えてルーニの司教勢力,街道の関税など,宗教的,経済的側面の地域形成の決定要因になっていることが明確になった。
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