1.トスカーナにおいて、明確な特徴をもつ固有の地域を地形、経済、政治、宗教の要因から特定した。地形的要因は本流と支流の谷、尾根、丘陵、台地、盆地、平地がつくる物的かつ空間的な構造である。経済的要因には陸路と河川交通路の位置と方向、政治的要因には教皇派と皇帝派ならびに大都市国家間の闘争と領域支配の構造がある.また宗教的要因としては司教区の糊、教皇との関係、修道院の活動が重要である.以上の要因からトスカーナの14の地域を調査・研究の対象として選定した。 2.そのうちの8地域:1マグラ川流域・ルニジアーナ地方、2ヴェルシリア地方、3セルキオ川流域・ガルファニャーナ地方、4ヴァル・ディ・ニエヴォレ地方、5アルノ川下流域、6フィレンツェ西方域、17アルノ川最上流域・カゼンティーノ地方、8テヴェレ川最上流域、ならびに各地域を構成する計43小都市を現地において調査した。対象とする複数の小都市を、固有の地域を形成させる核として捉え、各都市と地域の特性を、特に中世後期における史的形成過程の中で分析した。その結果、小都市は単一の都市として独自の形成をするだけでなく、隣接する同一地域の小都市との関係性の中で成立し発展していくことが明らかになった。 3.今後は特定した14地域のうち未調査の6地域:1ムジェッロ地方、2アルノ川上流域・ヴァルダルノ地方、3ヴァル・ディ・キアナ地方、4エルサ川流域、5クレーテ地方・ヴァルドルチャ地方、6メタリフェレ丘陵地方・エルバ島について、同様の方法で現地調査を行い、今回、調査が終了した8地域と共に、都市の分析図面、課税用不動産登記台帳の地籍図、写真資料を作製し、トスカーナの地域と小都市の総体を系統的に分析し、その特質と形成過程を解明したい。
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