住まいの空間と儀礼との具体的な関係を明らかにするために、本年度は2ヵ所の民家調査と文献史料に基づく寝殿造における儀式の調査を実施した。具体的な内容は次の通りである。 1.岐阜県白川村荻町の合掌造り民家における儀礼と空間との対応関係を明確にするため、6月に予備調査(調査対象め決定と調査依頼)を行った後、9月に調査対象民家の実測調査を実施した。そして、10月中旬には白川村最大の祭りどぶろく祭りの調査を行い、祭りの御神輿巡行と民家の空間との関係を調査した。また、11月28日には鈴口家で行われた仏事報恩講の調査を実施し、合掌造り民家の空間がこの儀礼と深いかかわりを持っていることを確認にした。なお、これら調査の成果として鈴口家・和田家・旧寺口家のアイソメ図を作成。鈴口家における儀式の際の様子もアイソメ図として表現した。 2.宮崎県椎葉村の民家の実測調査を11月初旬に実施した。これは来年度以降行う予定の椎葉神楽・臼太鼓おどりの調査のための予備調査である。この実測調査をもとに4棟の椎葉村の一列型民家のアイソメ図を作成し、その空間的特質を明確にした。 3.平安時代の日記『台記』『兵範記』に残る東三条殿における正月大饗に関する語事を詳細に検討し、儀式の室礼・次第などを明確にした。また、任大臣大饗・任大将饗・元服・氏寺参賀などについても同様の検討を行室礼や次第から儀礼と空間との対応関係を明確化した。なお、本研究についてはすでに論文を執筆しており、近々発表予定である。
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