平成15年度に行った調査研究は、宮崎県椎葉村の民家の実測調査およびそこで行われた臼太鼓踊り・椎葉神楽の調査と、宮殿・寝殿造における儀式の変遷が寝殿造の成立に与えた影響について文献史料から検討した研究である。 椎葉村の調査では、平成15年7月に予備調査や調査依頼を行い、9月中旬に椎葉村追手納地区の民家の実測調査、下旬に臼太鼓踊りの調査、12月に椎葉神楽の調査を実施した。これまでの椎葉村における3年間の調査の結果、椎葉村周辺地区に見られる並列型民家が神楽の舞台となることを強く意識して作られていることをはっきりと確認することが出来た。 寝殿造の儀式に関する資料に加えて、今年度は平城宮・平安宮における儀式にも着目した。その結果、寝殿造における儀式が成立する前提として、宮殿儀式の変化、特に下級官人をもてなす儀式が9世紀前半に急速に衰退し、それを補完するものとして貴族住宅における儀式が成立すること、そしてそのことが寝殿造の誕生と深く関わっている可能性を指摘することが出来た。現在、研究成果をまとめた報告書を作成中で、報告書の中でこの問題について詳しく述べることとしたい。
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