本研究は、日本の住まいと儀式との関係をより明確にすることを目的として行ったものである。研究は大きく二つの観点から進めた。 一つは、文献史料による古代の宮殿および貴族住宅における儀式と空間の研究である。六国史をはじめとする史料から古代の宮殿における儀式について調査し、古代宮殿の空間と儀式の変遷を明確にした。そして、こうした宮殿儀式の歴史の中に儀式専用空間に起源を持つ寝殿造が成立する歴史的背景を求め検討した。また、東三条殿における儀式の室礼と次第を詳細に検討することで、空間と儀式との対応関係を明確にした。 二つ目は、民家と儀式の関係に関する調査である。本年度は宮崎県椎葉村を調査対象とし、京都女子大学の学生の協力を得て民家の実測調査と祭礼・儀式の調査を行った。 さらに本年度は、科学研究費の助成の最終年度に当たるので、研究のとりまとめも行い、報告書を作成した。報告書は、本研究を総括する第1章「儀礼・空間・秩序」、宮殿儀式の歴史と寝殿造りの成立について考察した第2章「宮殿儀式と正月大饗」、東三条殿における儀式の実態を解明した第3章「東三条殿における儀式の装束と次第」、白川村合掌造りの平面と祭礼との関係を考察した第4章「白川村合掌造り民家の空間構成と儀式」に英文の論文"The origin of the traditional Japanese house"の5章から構成されている。
|