炭鉱関連の資料収集は、主として九州大学石炭研究資料センター所蔵の「麻生家文書」と三井文庫寄託の『三池鉱業所沿革史』で行った。「麻生家文書」の建築関係の資料の中で特筆されるのは、明治28年の「石炭坑場竪楼用檜木材取調書」、明治35年の「麻生商店職工舎宅平面図」、同年の「役員舎宅弐軒續壱棟建築積り書」、明治30年代後半以降の「豆田坑所長宅」平面図、大正元年の「病院舎宅建築仕様書」などである。明治27年度から昭和8年度までの麻生家の『日誌』の中から建築に関する事柄を抽出しているところである。 『三池鉱業所沿革史』の中の資料では、職員社宅の標準化が昭和13年に完成し、甲乙丙丁と区別された社宅の間取りが、甲には7種類、乙には9種類、丙には12種類、丁には2種類あり、多様であったことが今まで知られていなかった。その他、沿革史から社宅以外の建築関連の図面や写真等の資料を収集した。 三井田川・三井山野・住友忠隈の各炭鉱に関する従来までに収集していた資料及び今年度収集した資料に基づいて「筑豊における昭和期の炭鉱住宅について」を執筆した。 「麻生家文書」は膨大な量であり、三井文庫には他の鉱業所の沿革史等があり、来年度も調査を継続する予定である。 建築の調査では麻生本家の実測調査と大牟田市内の悉皆調査を実施した。麻生本家では室内展開を主とした調査を行った結果、他の炭鉱主の住宅を含めた室内意匠の分析が可能なデーターが備わり、今後考察を行う予定である。平成9年3月の三井三池炭鉱の閉山から5年が経過した時点での炭鉱関連施設の残存状況を調査したが、文化財以外には主要なものはないことが把握され、古写真の収集を並行して行った。
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