ナノ構造体の伝導現象、特にスピン依存伝導を調べるために、ナノ電極作成、特殊TEMホールダ開発、強磁性金属ナノ粒子系および量子細線のコンダクタンス量子化に関する研究を遂行した。その結果、TEMを用いたナノ構造作製、伝導パス選択および計測が定常的に可能となった。今後のナノ構造体におけるスピン依存伝導研究に少なからぬ寄与ができるものと考えられる。 1.ナノ電極の作成:ダイヤモンド粒子をマスク材とするイオンスパッタ法により、ナノサイズ先端、長さ数十μmの電極の作成手法を確立した。TEM内ナノ伝導実験が可能になった。 2.ナノ伝導実験用TEMホールダ:サブnA分解能で電流計測可能なホールダが完成した。2本の電極が搭載可能であり、伝導計測場所をナノメートルスケールで選定可能にした。 3.数個のFeナノ粒子からなる伝導パスの電気伝導特性:厚さ10nmのFe-SrF_2複合膜を試料とし、TEM像を観察しながら、別な針状金電極を試料に接触されることによりI-V測定(室温)を行った。接触断面積が700nm^2程度以下になったとき0.4V程度のクローン閉塞を観測できた。この領域に含まれるFe粒子数は10個程度である。 4.AuおよびFeナノワイヤーにおける量子コンダクタンス:TEM内において非磁性のAuおよび強磁性Feの伝導実験を行い、いずれの場合にも半整数量子コンダクタンスが観測される事を確認した。またその出現確率が破断速度、磁場、電圧により左右されることがわかった。また1秒程度この状態を保持することに成功した。
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