研究概要 |
1.Al-Li-Cu系: 時効前期過程においてGP-Iゾーン上に析出するδ'相は初期段階においてはランダムに析出するが、時効が進むにつれてGP-Iゾーンを挟む二つのδ'相は必ず逆位相の関係にあることを見出し、その理由としてLi-Cu-Li結合が高いエネルギーを持つからであることを指摘した。そしてこの逆位相の関係にあるδ'-GPI-δ'の構造体は通常のAl-Cu系でGP-Iゾーンが安定とされている温度域よりはるかに高い220℃でも安定に存在することを示した。 一方、時効後期過程においてはθ'相およびT1相が主要な析出相であるが、これらの相について次の点を明らかにした。 (a)θ'相はAl-Cu2元系の場合では正方晶に属するがAl-Li-Cu系において、c方向の格子定数が増加すること。さらにAlマトリックスの{100}より傾いて成長する場合があることを見出した。そしてこの原因がLiのθ'相への固溶に起因すること及びTB相との関連を指摘した。 (b)T1相についてはLiの不足に伴ってAl-Cu-Mg系などで頻繁に見出されるω相に連続的に変態することをHREMにより見出した。また、高分解能電子顕微鏡のシミュレーションからAlマトリックスに対しω相は二つのバリアントを持つこと、そして、これらのバリアントにT1相から連続的に成長が進むことを実験的に示した。 2.Mg-Zn系: 時効初期段階においてGPゾーンおよびpre-β'相は認められないことを確認した。一方、β'相はシミュレーションおよび格子定数の結果からMgZn2のラーベス相と思われる。これは母相のc軸方向に成長したロッド状の析出物でかつ母相のc軸と整合性がよく、母相との方位関係は[010]_<β'>//[001]_<Mg>,[008]_<β'>//[120]_<Mg>であった。また、β相はa=5.06nm, c=2.6nmの六方晶系に属する結晶であることを明らかにした。一方、母相との方位関係は一意でなく、今後さらにこの析出相の構造および母相との整合関係を調べる必要がある。
|