nmオーダの空隙が連続的に繋がった構造を有する金属材料の作製を目指し、数10TorrのHeガス中で生成した超微粒子をより低圧に保たれた堆積室へガスジェット流により搬送、基板上へ直接堆積固化させるガスデポジション法を用いて低密度ナノ結晶材の作製を行った。超微粒子を基板上に堆積させる際の運動エネルギーを制御することにより、通常の金多結晶材料に対する相対密度が約93〜98%、平均結晶粒径が10〜20nm、室温のHeガスに対して10^<-13>以下から10^<-11>mol・m/(Pa・m^2・s)オーダのガス透過率を有する低密度金ナノ結晶膜の作製に成功した。高いガス透過性を示す試料のSTM表面観察やガス透過率の分子量依存性の測定結果から、直径が10nmオーダのナノチャンネルが面積密度〜1%の割合で存在することが示唆され、一部の粒界層に沿ってナノチャンネルが形成されていることが予想される。現時点でのチャンネル径はガス分子よりも大きいために分子流で透過しており、そのためガス透過率が天然ゴムなどの高分子膜よりも大きいと考えられる。作製条件と膜質の相関の検討から、より微細なナノチャネルを有する試料を得るには、より低い蒸発源温度及び超微粒子生成室He圧力において、より小さな平均結晶粒径を有する試料の作製を目指すべきとの方針が得られた。粒界特異性を利用したガス選択透過や化学反応性の向上について検証するため、今後、白金やパラジウム、銀などの低密度ナノ結晶膜で同様な実験を行う計画である。一方、低密度金ナノ結晶材料は1200K焼鈍後でも平均結晶粒径は40nm程にしかならないという非常に高い熱的構造安定性が観測された。400K以上で急速な粒成長を示す相対密度99%以上の高密度金ナノ結晶材料に比較して、高々数%の密度低下で熱的安定性が劇的に向上する原因の解明は、ナノ構造材料の弱点である熱的構造不安定の改善につながり、その原因を探る研究を現在計画中である。
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