研究概要 |
置換型合金の原子拡散や規則不規則変態などは長時間スケールの現象であり、分子動力学法の適用限界を遥かに越えている。この種の現象は格子気体モデルで扱うのが効率的である。我々は、現実的な非離散系の分配関数と格子気体モデルの分配関数が等しいという条件から格子気体モデルの相互作用パラメータを決定するという、全く新しい考え方に基づく「ポテンシャル繰り込み理論」を提案し、Si結晶、Cu_xAu_<1-x>合金に対して、このポテンシャル繰り込み理論を用いて各温度で決定された相互作用パラメータを持つ格子気体モデルのモンテカルロ・シミュレーションを行ってきた。得られた熱膨張係数や融解温度は分子動力学シミュレーションから得られる値とほぼ一致し、Cu_xAu_<1-x>合金の規則不規則変態の相図も組成比xに対して連続的に計算し、ほぼ実験から得られる数値を再現することが分かった。この結果は最近J.Crystal Growthに掲載された。また、良溶媒中の半屈曲性高分子のコンフォメーションを調べるのにもこのポテンシャル繰り込み理論を適用し、高分子の屈曲性が温度に依存することを明らかにした。さらに、様々な濃度と屈曲性の場合に高分子鎖の慣性半径を求め、日本物理学会(岡山、2003,Sept.20-23)や高分子基礎研究会(平成14年1月25〜27日、平成15年1月31日〜2月2日、三重県・長島;平成15年12月4〜6日、広島県・野島)などで発表した。また、本研究全般にわたる成果を第8回IUMRS先進材料国際会議(ICAM-IUMRS、横浜、2003,Oct.8-13)で発表した。このようにポテンシャル繰り込み理論は分子動力学法と格子気体モデルを繋ぐ架け橋となる有力な研究手法であり、この他にも今後多くの系に適用されていくことが大いに望まれる。
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