研究概要 |
本年度補助金2,600千円によって、試料加熱電源であるソース・メーター、温度検出のためのナノボルト・メーターを購入し現有設備品の高温断熱走査型比熱装置を改良立ち上げた。この装置と光交流比熱測定装置を組み合わせることによって、Ge-Te系液体半導体のTe側の試料について構造変化の温度領域の比熱を測定した。得られた結果をまとめると、(1)比熱のピーク温度で表される構造変化の"転移温度"は15at.%Ge近傍で極大なる。 (2)15at.%Ge近傍で比熱のピーク値は極大となり半値幅が最も小さくなるすなわち構造変化がこの組成で最も鋭くなる。 ことを見出した。 平行してモル体積、音速の測定を行い、比熱のデータと組み合わせて、構造変化に関る熱力学応答関数(定圧比熱、熱膨張係数、等温度圧縮率)を決定した。結果の一部は横浜で開催された第11回液体及びアモルファス金属国際会議(LAM11)で口頭発表した。論文はJ.Non-Cryst. Solids誌(会議のプロシーデングス)に印刷中である。更に熱力学応答関数の幅(構造変化の温度幅)についての考察を行い、これが転移点の熱力学的な揺らぎとして理解できることを示し、結果を日本物理学会2001年秋期大会で発表した。 また本研究の海外協同研究者であるC. Bichara, C. Bergman博士をフランスより招聰し、熱力学応答関数の結果の討論・中性子回折及び第1原理分子動力学の結果との比較検討を行った。その結果は、Ge-Te系液体半導体の構造変化が主にGe原子の周りの局所的な配位の急激な増加によってもたらされることを強く示唆しており、データを取りまとめ共同論文として投稿準備中である。
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