反強磁性的相互作用準周期格子のフェイゾン空間磁気秩序のシミュレーションによる研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13650717
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 松尾 進 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (10023293)
• 研究分担者: 中野 裕司 熊本大学, 総合情報基盤センター, 教授 (40198164) ; 石政 勉 北海道大学, 工学研究科, 教授 (10135270) ; 森 昌弘 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (10029738)
• キーワード: 準結晶 / 反強磁性 / 磁気秩序 / フェリ磁性 / シミュレーション / フェイゾン空間

研究概要

正20面体相準結晶Zn-Mg-Ho準結晶の構造モデルのHo原子位置にIsingスピンをおいた系で、Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida型のスピン間距離に対して振動的な相互作用を仮定して低温における磁気秩序状態に関するシミュレーション計算を行った。局所的なスピン状態更新にMetropolis法を用い、simulated annealing計算を行った。Ho原子間の最短の距離と第3近接の距離が反強磁性的相互作用、第2近接と第4近接の距離が強磁性的相互作用の場合、反強磁性的な長距離磁気秩序が実現した。実現した反強磁性的長距離磁気秩序を、準結晶の特徴であるフェイゾン空間で解析した結果、この磁気秩序はフェイゾン空間におけるスピン領域の分割という、従来の周期結晶には存在しない全く新しい型の磁気秩序であることが分かった。このことから、反強磁性的な磁気秩序の特徴をさらにとらえやすいと考えられる、2次元ペンローズ格子上にIsingスピンをおいた系について、スピン間距離に対して振動的な相互作用を仮定して低温における磁気秩序状態に関するシミュレーション計算を行った。2次元ペンローズ格子上で、二種類の菱形の辺の上の矢印のマッチング規則に適合する反強磁性的な長距離磁気秩序が存在し、それがフェイゾン空間におけるスピン領域の分割となっていることを見出した。磁気構造の研究に関連して、準結晶の構造と磁性に関する実験的な研究も行った。

研究成果

• [文献書誌] S.Matsuo, T.Ishimasa, H.Nakano: "Quasiperiodic long-range ferrimagnetic order in Ising model simulation in an icosahedral quasicrvstal model structure"J.Mag.Mag.Mater.. 246. 223-232 (2002)
• [文献書誌] S.Kashimoto, S.Motomura, H.Nakano, Y.Kaneko, T.Ishimasa, S.Matsuo: "Magnetic property of a Zn-Mg-Sc icosahedral quasicrystal"J.Alloys and Comp.. 342. 384-388 (2002)
• [文献書誌] S.Motomura, T.Ishimasa, H.Hirai, S.Kashimoto, H.Nakano, S.Matsuo: "Magnetic properties of F2M-type Al-Pd-Mn quasicrystals"J.Alloys and Comp.. 342. 393-396 (2002)
• [文献書誌] T.Mizutani, H.Nakano, S.Kashimoto, Y.Takatani, M.Mori, T.Ishimasa, S.Matsuo: "Ten-fold-like magnetic anisotropy in electrical conductivity of Al-Pd-Mn icosahedral quasicrystal"J.Alloys and Comp.. 342. 360-364 (2002)
• [文献書誌] Y.Kaneko, R.Maezawa, H.Kaneko, T.Ishimasa: "Cu-based icosahedral quasicrystal formed in Cu-Ga-Mg-Sc alloy"Phil.Mag Lett.. 82. 483-493 (2002)
• [文献書誌] Y.Kaneko, T.Ishimasa: "Millimeter-sized single icosahedral quasicrystal of Zn-Mg-Sc alloy"Jpn.J.Appl.Phys.. 41. L1112-L1115 (2002)