研究課題/領域番号 |
13650720
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 秀樹 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20202749)
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研究分担者 |
水野 正隆 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50324801)
白井 泰治 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20154354)
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キーワード | 陽電子消滅 / 形状記憶合金 / マンテンサイト変態 / 前駆現象 / ニッケルチタン合金 / 陽電子寿命 |
研究概要 |
等原子比近傍のNiTi系合金は、室温近傍で形状記憶効果を発現するため、温度作動素子やアクチュエータなどとして広く利用されている。形状記憶効果を発現させているのは、NiTi系合金の熱弾性マルテンサイト変態であり、優れた形状記憶合金の開発にはマルテンサイト変態の理解は欠かせない。近年、マルテンサイト変態開始前に、弾性定数の低下などマルテンサイト変態の前駆現象が報告されているが、その際の電子構造の変化については全く情報がない。研究代表者らは、マルテンサイト変態に前駆して起こる母相の電子状態の変化を明らかにするためNi_<51>Ti_<49>、Ni_<52>Ti_<48>、Ni_<47.5>Ti_<50>Fe_<2.5>の陽電子寿命と電気抵抗の温度変化を測定した。その結果、Ni_<51>Ti_<49>の陽電子寿命はMs点より100K以上高い320K付近から温度低下にともない、120から150psまで上昇することを発見した。一般に、温度を低下させると、体積収縮が起こるため陽電子寿命は減少することが知られている。,本測定結果はこれと全く反対の結果であり、マルテンサイト変態に前駆して起こる母相の電子構造変化を捉えることに成功した。一方、Ni_<52>Ti_<48>についても陽電子寿命測定を行ったところ、320から200Kまで温度を低下させると、Ni_<51>Ti_<49>と同様に、125から150psまで陽電子寿命は増加した。これは、マルテンサイト変態を起こさないNiTi合金においても、マルテンサイト変態の前駆現象と同様な電子系の変化が起こっていることを示している。また、母相からR相を経てB19'相へ二段階にマルテンサイト変態をするNi_<47.5>Ti_<50>Fe_<2.5>においても陽電子寿命の異常上昇は見られるが、NiTi二元系合金において観察されたものより小さかった。このようにマルテンサイト変態の起源を明らかにする上で大変重要な知見が得られた。
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